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ネガティブな感情を抱えたときにどうするか

2022年を振り返ったときに、今年はパートナーの大病や新規事業、シェアハウスから1人暮らしへ、そして転職など、大きな変化がいくつかありました。

変化を経験する中で、今まで感じたことないような怒りや悲しみといったネガティブな感情を抱くこともありました。痛みを伴う経験でしたが、振り返るととても良い経験だったと感じています。

僕がそれらの感情とどう向き合ってきたのか、そこから得た学びはなにかを振り返っていきます。

感情を表現することすらできなかった

今年の7月ごろ。そのころの僕は、いろんなことが重なって、とても強いストレスを抱えていました。それでも前に進み続けるために、28年間生きてきた中で紡ぎ出した自分なりのストレス対処方法を自分に言い聞かせ、実行する日々でした。

「自分がコントロールできないことは悩まないでおこう」

「今目の前の自分ができることに集中しよう」

「よく食べ、よく寝て忘れてしまおう」

しかし、これらのやり方では到底太刀打ちできませんでした。ほかにも、運動したり、サウナに行ったり、関連本を読んで良いとされていた瞑想をしたり、毎月受けているコーチングでもテーマに扱ってもらったり、さまざまなことを試しました。それでも、自分の中でなんとも言えないネガティブな感情が常につきまとっている感覚が続いていました。

そんな最中さなか、僕が受講していたコーチングスクール「ZaPASSザッパスコーチ養成講座」の卒業生コミュニティにて、講師の小寺毅さんを含む複数名でオンラインで話す機会に参加していました。

なんとか現状を打破したい。安心安全なこの場なら、今の気持ちを打ち明けてもよいのではないか。そして、なにかヒントを得られるのではないか。

そう思い、勇気を持って以下の言葉を場に出してみました。

今どうしても、ネガティブな感情でいっぱいになってしまうんです

そう打ち明けたとき、小寺さんが僕にこう問いかけてくれました。

冬馬さんが今感じているネガティブな感情とは、どんな感情なんですか?

こう問われたときに、「え、え〜っと…」と言葉に詰まってしまいました。

しばらく沈黙が続いたあと、「怒り…ですかね」と答えました。

同時に、「あぁ、自分は自分の感情すら正しく認識できていないんだな」と感じたのを覚えています。

これまでの人生で、たしかにいろんな感情を抱いてきました。嬉しい、楽しい気持ちをたくさん経験し、自分は何が好きで、何が大切かは存分に理解してきたつもりです。他方で、「怒り」や「悲しみ」など、自分の中でネガティブと捉えている感情は、感じないほうが良いという強い思い込みを持っていました。

これまでの人生を振り返ってみると、怒っている人の近くにいるのが本当に苦手でした。「なんでこんなに感情的になるんだろう?」「怒って誰が得するんだろう?」と、子どもながらに思っていたことを覚えています。そう思うようになったきっかけも、なんとなく思い当たる節もあります。

また、悲しい気持ちも「足を止まらせるもの」「感じている時間がもったいない」と、なるべく感じるべきではないと思っていました。

その結果、ネガティブな感情を受け容れることができず、自分がなにを感じてるのかを表現することすらできないくらい、自分の中で扱い切れない状態になっていたのです。


ネガティブな感情を「なかったこと」にしない

今まさに自分が抱えている感情を、たどたどしく回答した僕に、小寺さんが続けました。

冬馬さん、ぜひその感情を一度じっくりと味わってみてはどうですか?

その言葉を聞いたとき、思いました。「ネガティブな感情を味わい、受け容れることでしか、僕は前に進めない」と。

たとえネガティブな感情であっても、自分が感じている感情をなかったことにしない。そう心に決めました。

そこからまずは、自分の中で感情を揺れ動いていることを感じたら、一呼吸置いて、「これは怒りだな」「これは困惑だ」などと心の中で言葉にして眺めてみることから始めました。

合わせて、コーチングスクール受講時代から小寺さんに勧めてもらった15分のジャーナリングも再開。紙のほうが好みで止めてしまいましたが、muuteというジャーナリングアプリもしばらく活用しました。

感情が揺れ動くたびに、「自分は今、何について怒りを抱いているんだろう」「なんで今、自分はこれを嫌だと感じたんだろう」「以前感じた同じような感情と、今回の感情はどう違うんだろう」と、自分と対話するような日々がしばらく続きました。

そうすると面白いことに、泉のように感情がどんどん湧き出てくる感覚がありました。乾いた心に、うるおいが取り戻されるような感覚でしょうか。

同時に、身体感覚を伴うこともありました。例えば、とても強い怒りを感じたときに、頭に血が上る感覚です。

デトックスが進んだのか、今まで抑えていた怒りや悲しさ、悔しさなど、ネガティブと捉えていた感情がとめどなく溢れてくる感覚も経験しました。「ああ、あのとき自分は、実はけっこう怒っていたんだな」と、過去の記憶を思い出して、1人自宅でめちゃくちゃ怒ったときもありました(笑)。

合わせて、ネガティブだと捉えていた感情以外にもとても敏感になりました。何か作品を見たときや、きれいな景色を見たときに、以前よりも心が動く感覚を持つようになったのです。これまでよりもずっと、豊かな自分になれた感覚でした。


味わったほうが前に進める

感情を味わう取り組みを始めて感じた気づきは、「感情をなかったことにするより、存分に味わったほうが、その後の行動にすばやくつながる」ということです。ネガティブな感情をなかったことにしていたときよりも、ずっと早く、そして本質的な行動を取れるようになったことに気づきました。

例えば、以下のような行動です。

  • 感情を存分に味わうことですぐに落ち着きを取り戻し、ネクストアクションを考え行動する

  • ネガティブな感情が生まれるトリガーを事前に察知し、回避できるよう計画する

  • どうしてもネガティブな感情が生まれる場面では、それを逆手に取ってエネルギーに変え、その時間を最短で終わらせるように努める

  • それでも避けられない場合は、割り切って周囲に協力を得る

  • 人に対する感情のときは、率直に「どうしてほしいか」を伝える(ただし、感情的にならないように十分落ち着いてから)

  • ネガティブな感情を抱いても、「そういう考え方や場面もあるよな」と視点を増やすことにつなげる

大事なのは感情を感じたあとで、何を考え、行動するかということです。感情のパターンを知り、自己理解を深めておくことで、感情によって行動を引きづられることを抑えることができます。

そして、感情はどんなものであっても、自分にとって大切なことはなにかを気づかせてくれるものだと気づきました。逆にネガティブな感情ときちんと向き合わず、溜め込んだままにすることは、自分が大切にしたいことから自分自身を守れず、自己嫌悪につながる恐れもあります。

真にポジティブシンキングな人は、どんな感情もまずは受け容れ、多面的に物ごとを捉えているからこそ、気分の切り替えが早いのだと思います。ネガティブな感情と向き合わずに無理やりつくるポジティブ感情は、きっと空虚で納得度が低いものです。

過去の僕のように、「ネガティブな感情は持たないべき」と思っている方こそ、一度しっかりとネガティブな感情を味わってみてほしいです。そうする中で起こる自分の変化を楽しむこと。そうすると次第に、今よりもっとシンプルで軽やかに人生を楽しめるようになるのではないかと思います。

そもそも「感情を味わう」ということが分からない、という方は、以下の本がおすすめです。または、コーチングを受けてみるのも良いかと思います。


インサイド・ヘッドの「カナシミ」

この文章を書きながら、昨年のベストバイで紹介したディズニー映画「インサイド・ヘッド」を思い出しました。

https://www.disney.co.jp/movie/head.htm

以下にあらすじを抜粋しますが、作中には少女の頭の中に存在する5つの感情 ー喜び(ヨロコビ)、怒り(イカリ)、ムカムカビビリ悲しみ(カナシミ)ー が登場します。

ママとパパに見守られて、ミネソタで元気いっぱいに育った11才の少女ライリー。そして、いつも彼女の頭の中にいる“5つの感情たち”―ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミ。
ところが、遠い街への引っ越しで、不安とドキドキがいっぱいになったライリーの心の中ので、ヨロコビとカナシミは迷子になってしまいます。
ライリーは、このまま永遠にヨロコビやカナシミの気持ちを見失ってしまうのでしょうか?

https://www.disney.co.jp/movie/head/about.html

この物語の鍵となるのが「カナシミ」の存在です。僕が悲しみをネガティブな感情として目を背けていたように、物語の中でも邪魔者扱いされます。

しかし、物語が進むにつれて、悲しみも人間に欠かせない感情であることを教えてくれます。僕自身も今年の経験を通して、悲しみの感情も、自分の大切にしたいことや守りたいものを司っているように感じています。

この映画は、記憶と感情という脳のメカニズムについて、おそらく相当な専門家の監修が入りつつ、コミカルに、そして感動的に描かれています。
子ども向けの映画ですが、ぜひ大人に見てほしい映画です。有料ですが、Amazonでも見れますので年末年始休暇のおともにぜひご覧ください。


コンフォートゾーンを抜け出せ

この記事は、 #ZaPASSアドベントクエスチョン 8日目の記事です。25名の養成講座受講生が、講師の小寺毅さんから受け取った問いに答えていきます。
僕は以下の問いを受け取りました。

最初にこの問いを見たときに、「ああ、小寺さんはあのときのことを覚えていてくれたのかな」と、目を開かれる思いがしました。せっかくなので、そのときの経験も踏まえてこの記事を書きました。

まず花という文字を見たとき、ふと「自分の誕生花ってなんだろう」という気持ちが湧いてきました。

調べてみると、僕の誕生日、12月15日の誕生花は沈丁花じんちょうげ。花言葉は「栄光(勝利)」です。

https://unsplash.com

ここまで書いてきたように、今年は挑戦や変化の中で、たくさんの痛みを経験しました。この問いは「痛みを経験した先には、“栄光”があるよ」という小寺さんからのメッセージのようで、お守りを受け取ったような気持ちになりました。

同時に、「痛みをいとわず、積極的にコンフォートゾーンを踏み出そう」というメッセージとも受け取りました。今年は痛みを味わうことを通して、痛みと思えるような感情をなかったことにせず向き合い、行動につなげる術を手に入れることができました。この経験が、きっと来年以降の僕の背中を押し続けてくれると思います。

今年、ネガティブな感情を味わうことを始めたころ、ちょうど甲子園が行われていて、高校球児からたくさん元気をもらっていました。最後に、今年の甲子園のテーマソングで、よく聴いたお気に入りの曲の歌詞を引用して、筆をきたいと思います。

輝け いま誰よりもその涙 過ごした時間の数だけ
強くなってきたはずだから さぁ 胸を張れ

平井大『栄光の扉』


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